先端技術分野の「世界初」調査 対応事例
バイオマーカー検査と、光学ハードウェア。どちらも、特許、査読論文、各国の規制当局の登録情報まで調べなければ「先行例がない」と言えない分野です。当組合が受注し、現在調査を進めている2件を、社名を伏せて紹介します。
- 掲載件数
- 2件
- 状況
- 受注済み、調査中
- 社名、製品名
- 非公開
- 記載時点
- 2026年9月21日
ご相談時の表示案
世界初の[製品カテゴリ](取り消し)
先行例あり。この定義ではお受けしていません。
調査の対象にした定義
[方式や提供形態の限定]の[製品カテゴリ]として世界初
表示には、調査時点、調査主体、調査範囲を併記します。
伏せたこと、書いたこと
社名、製品名、表示文言は書いていません
「世界初」の限定条件は、それ自体が依頼者を特定できる情報です。世界で一社しか当てはまらないことを確かめるのが、この調査の目的だからです。限定条件については、どの種類の軸で区切ったかだけを記します。
調査結果は書いていません
2件とも調査の途中です。このページは、依頼者の製品やサービスが世界初であることを示すものではありません。
書いているのは、当組合が実際に行ったことです
受注前の事前可否判断、お受けしなかった定義、調査定義の設計、参照している情報源。架空の事例や、創作した数値は含みません。
対応事例
海外に先行検査がある分野で、「測定対象」ではなく「提供形態」を軸に定義した事例
- 対象
- 生体試料に含まれるバイオマーカーを解析し、特定の疾患リスクを評価する検査サービス(一般消費者向けの新サービス)
- ご相談の内容
- 新サービスの公表に合わせて「世界初」を表示したい。表示案の候補を複数お持ちでした。
- 表示を予定する媒体
- 自社サイト、プレスリリース、広告、販促物
- 関係する法令
- 景品表示法(優良誤認、不実証広告規制)、薬機法(医療機器、体外診断用医薬品への該当性)
何が難しかったか
同じ系統の先行例がありました。
- 以前から欧米で提供されてきた検査
- 海外の地方当局に、医療機器として登録された検査キット
- 米国FDAのBreakthrough Device指定を受けた、開発段階の検査
- 別の方式で承認を受けた、国内の検査
「指定」と「承認」、「登録」と「販売の実態」、「研究発表」と「商用提供」は、それぞれ別の事実です。先行例を一件ずつ、一次情報で確かめる必要がありました。
当組合の判断
表示案の候補のうち、対象を広く取った案は、予備調査の段階で先行例が見つかりました。当組合はこれらを成立しないと判断し、その定義での調査はお受けしていません。残る案をもとに、先行例と客観的に区別できる定義を当組合から提案し、採用いただきました。
定義の設計
- 限定の軸を、測定する物質ではなく、検査の提供形態に置きました。物質名で限定を重ねると、「条件を足せば何でも初になる」という批判をそのまま裏づけてしまいます。提供形態の違いは、利用者が実際に体験する違いでもあります。
- 定義には、先行例と区別できる要件を二つ入れています。調査の途中で一方の区別を崩す資料が出ても、もう一方で判定できるようにするためです。どちらも崩れた場合、その定義は不成立です。
- サービスの名称が指す範囲は、「世界初」と言える範囲より広いものでした。名称のすぐ横に「世界初」を置くと、広い範囲で世界初だと読まれます。名称と「世界初」の表示は、別の文、別の位置に置く配置ルールにしています。
- 「世界初」の根拠は当組合の調査報告書で、性能数値の根拠は依頼者の検証データです。二つは別の資料なので、注記も別々に置きます。一つにまとめると、一方への疑義がもう一方に及びます。
- 広告では、報告書の厳密な定義を平易な言葉に置き換えます。その際に落としてはいけない限定語を、先に確定しました。限定語を一つでも落とした表現は、調査で裏づける範囲を超えます。
参照している情報源
- 各国の医療機器、体外診断用医薬品の登録情報と承認情報
- 米国FDAの公表資料
- 海外企業が証券当局に提出した開示書類
- 査読論文、学会抄録
- 過去のWebアーカイブ
- 特許公報
同じ「世界初」を名乗る海外企業がいる分野で、「動作原理」を軸に定義した事例
- 対象
- センサーと光学部品を組み合わせた新製品、2製品。比較すべき製品群は、製品ごとに異なります。
- ご相談の内容
- 新製品の公表に合わせて「世界初」を表示したい。表示案を複数お持ちでした。
- 表示を予定する媒体
- 自社サイト、パンフレット、プレスリリース、店頭POP、Web広告
- 関係する法令
- 景品表示法(優良誤認、不実証広告規制)、薬機法(医療機器への該当性)
何が難しかったか
先行例の多い分野でした。
- 過去に海外で市販され、当時「世界初」を名乗っていた製品(事業者はのちに破綻し、販売は終了)
- 同じ「世界初」の文言を、いま公に使っている海外の開発企業
- 査読付き学術誌に掲載された、大学の研究試作機
- 手動で調節する方式の市販品
- 近い機能を持ち、自ら「日本初」をうたう国内の既存製品
販売を終えた製品は、Web上の痕跡が薄くなります。当時のプレスリリース配信記録や、Webアーカイブまで遡る必要があります。
当組合の判断
お持ちの表示案は、いずれも限定なしでは立証が難しいとお伝えしました。最も広い案は、製品の種類を表す語が広すぎて、数十年前に市販された別分野の製品まで比較対象に入ります。別の案は、国内に既存製品があるため、世界初どころか日本初も成り立ちません。面談ではこの見立てを先にお伝えし、続けて代替の定義を示しました。
面談でお伝えした見立ての一部は、その後の一次情報の確認で、修正が必要だと分かりました。見積書をお送りする際に、当組合から訂正してお伝えしています。
定義の設計
- 限定の軸を、製品の動作原理に置きました。比較対象は、制御が自動か手動か、動作原理が同じか、医療機器に該当するか、の三点で切り分けます。
- 先行例は一件ずつ、定義に当てはまるかどうかを根拠資料つきで判定します。当てはまる先行例が一件でも残れば、その定義は不成立です。
- 限定が恣意的でないかを確かめるため、第三者の技術メディアや学術文献が、その方式を別の区分として扱っているかを確認しています。
- 2製品は比較すべき製品群が異なるため、定義も調査も製品ごとに分けています。
- 何をもって「初」とするか(公表、発売、商用提供のいずれか)と、その基準日を、調査の前に固定します。
- 特許出願は、出願から1年6か月が過ぎるまで公開されません(特許法64条)。調査時点では見つけられない先願があり得ることを、調査の限界として報告書に明記します。
参照している情報源
- 特許、実用新案(J-PlatPat、Espacenet、USPTO、Google Patents)
- 査読論文、学会や展示会での発表
- 海外クラウドファンディングの募集記録
- プレスリリース配信サービスの過去記録
- 過去のWebアーカイブ
- 欧州、北米、中東などの現地語の製品情報
「先行例がない」を確かめるために調べる場所
「世界初」の立証は、先行例が存在しないことの証明です。アンケートでは確かめられません。分野ごとに、先行例が記録として残る場所を特定し、そこを調べます。どの情報源にも、分かることと分からないことがあります。
| 情報源 | 確かめること | 限界と注意 |
|---|---|---|
| 特許、実用新案 | 同じ方式の先願があるか。出願日と公開日。 | 出願から1年6か月は公開されません。特許があることと、製品が市販されたことは別の事実です。 |
| 査読論文、学会発表 | 研究段階の先行例。試作か、商用か。 | 論文があっても「商用として初」が直ちに否定されるわけではありません。ただし、限定の置き方は変わります。 |
| 規制当局の登録、承認情報 | 承認、認証、登録、指定のどれにあたるか。その時期。 | 「指定」は開発や審査を支援する制度上の扱いで、販売の承認ではありません。登録があっても販売の実態がない例があります。 |
| 企業の開示資料、プレスリリース配信記録 | 発売日、販売地域、当時の自称表現。 | 他社が「世界初」を自称していても、それが事実とは限りません。ただし、競合する主張が存在することは示します。 |
| クラウドファンディング、展示会、販売記録 | 市販が始まった時点。 | 支援の募集と、一般向けの販売は別の時点です。 |
| Webアーカイブ | 販売終了や事業者の破綻で消えた製品情報。 | 保存されていないページがあります。 |
| 現地語での検索 | 英語と日本語では出てこない、地域限定の製品。 | 網羅性には上限があります。 |
報告書には、調べた範囲、方法、時点とあわせて、調べきれなかった範囲を記載します。
どの分野でも変えないこと
成立を約束しません
存在しないことの証明には、確度の上限があります。調べた結果、成立しないとお伝えすることがあります。
成功報酬を受けません
結果に連動する報酬は、第三者としての判断を歪めます。費用は調査結果にかかわらず同額で、着手前にお支払いいただきます。
定義は調査の前に決め、結果を見てから動かしません
結果を見て比較対象や条件を狭めれば、消費者庁の報告書が問題にしている、恣意的な比較対象の選定にあたり得ます。
限定語を落とした言い換えには応じません
広告で読みやすくするための言い換えはお手伝いします。調査で裏づけた範囲を超える表現は、お断りしています。
技術資料がそろう前でも、相談できます
製品やサービスの概要と、表示したい文言の案をお送りください。調査の進め方と費用をご案内します。未発表の製品については、秘密保持契約を結んだうえで資料をお預かりします。
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